<Bienvenue a Tokyo!> 第2弾
東京へようこそ!

 2005年7月、”彩の国 埼玉芸術劇場”の「ピアニスト100」出演の為に来日中のピアニスト、エリック・ル・サージュさんにインタビューしました。
 ル・サージュさんとは、1998年秋にエマニュエル・パユさんの紹介でお目にかかって以来のお付き合いです。コンセール・パリ・トーキョウ主催のマスタークラスの講師をしばしば務めて下さり、又、コンサートにも出演して下さっております。出演コンサートは、2002年の秋の「コンサート・シリーズ PARIS-TOKYO Vol.9」。TOMONOホールでシューマンとドビュッシーを弾かれましたが、その時の「ダヴィッド同盟舞曲集」は、フランス物を好みシューマンを敬遠していた私を、シューマンの世界に近づけるきっかけとなりました。


野瀬百合子(以下Y): 昨年11月にパユさんと来日されて以来、半年振りですね。昨日着かれたそうですが、時差ボケは有りませんか?
エリック・ル・サージュ(以下E): 多分大丈夫です(笑)。今朝はちゃんと起きられましたから。
Y: 今回は、”彩の国”でのリサイタルの為の来日ですね?とても楽しみです。
E: ありがとう。”彩の国”まで、都心からは小一時間かかるそうですが、そのホールに行ったことがありますか?
Y: 2回、コンサートを聴いています。
E: 「100人のピアニスト」ですか? 僕が84人目というけれど、今までの「100人のピアニスト」を聴いたことがありますか?
Y: 残念ながら、今までの「100人のピアニスト」は聴いていません。”彩の国”に行ったのは、エリック・サミュ(パリ管の首席ティンパニー奏者)が来日した時と、サラ・ルヴィオン(神戸国際コンクール優勝のフルーティスト)が来日した時です。二人共友達なので聴きに行きましたが、ちょっと遠いですね。。
E: どんな感じのホールですか?収容人数は?
Y: 収容は600か700ではないでしょうか?明るい感じで、響きも良いと思います。但し、私が聴いたのは、マリンバのコンサートと、室内オケのコンサートなので、ピアノの響きは分かりませんが、とても感じの良いホールです。

Y: ル・サージュさんは、演奏活動を忙しくされていらっしゃいますが、パリ国立高等音楽院(CNSM・ベロフのクラスのアシスタント)とパリ国立地方音楽院(CNR・室内楽クラスの教授)で教えていらっしゃいますね。パリにいらっしゃる時は、演奏活動と先生業(?)をどのような割合でされているのですか?
E: 教えるのは、だいたい週1回のペースです。
Y: そうですか。次に、今後の演奏活動についてお聞かせください。
E: シューマンのピアノ曲全曲と、ピアノ入り室内楽曲全曲の演奏と録音です。コンサートは10回の予定で、2005年に行います。CDは、来年以降、Alpha から順次発売される予定です。
Y: 本当にシューマンがお好きなんですね。ところで、次に日本にいらっしゃるのは、いつですか?
E: 今年の10月に Les Vents Francais で(*公演日程は文末に掲載)、そして、来年は10月にポール・メイエと、11月にエマニュエル・パユと来日する予定です。
Y: メイエさん、パユさんと一緒に主宰していらっしゃるサロン・ドゥ・プロヴァンスの音楽祭についてお聞かせ下さい。
E: 今年は、映画に演奏をつける試みをします。来年(2006年)のテーマは Salon Romantique ですが、武満も加える予定です。
Y: 出演された方々から、素晴らしい音楽祭と聞いています。是非一度うかがいたいものです。

Y: ところで、ル・サージュさんは、パリ以外の場所でのご活動も多いので、ホテルを利用される機会が多いことと思います。私は、ホテル関係の雑誌に1年半ほどの間音楽コラムを連載しておりました関係で、音楽家の方々のホテルに対するお考えに大変興味を持っております。次に、ホテルについての質問をさせて下さい。
Y: 年に何日位ホテルにお泊まりですか?
E: 80日位です。
Y: ル・サージュさんにとって、最も良いホテルを教えていただけますか?
E: そうですね。。。僕にとって最も良いホテルというと、夏休みを過ごした海辺のホテルです。名前は全く覚えていませんが、本当に良いところでした。
Y: そのお答、如何にもル・サージュさんらしいですね(笑)。以前、スキーをされる場所についてうかがった時も、行く場所は特に決めていないというお答でしたから。ところで、今年の夏休みはどのようにお過ごしの予定ですか?
E: 練習、練習、また練習の日々だと思います。

Y: 日本には数多くおいでですが、日本の文化のどういった部分にご興味を持たれていますか?
E: 日本の映画は大好きです。黒澤、溝口、小津、北野の作品は素晴らしいと思います。文学では三島が好きですし、武満の音楽にも心を惹かれます。
Y: 日本料理もお好きですか?
E: もちろんです。日本料理は変化に富んでいると思います。
Y: ありがとうございました。リサイタルを楽しみにしております。

<リサイタル雑感>
 7月9日の”彩の国”のリサイタルは、私にとっては4回目のル・サージュさんのリサイタル体験。2000年のトッパンホール、2002年のTOMONOホール、2003年のサル・ガヴォー(パリ)、そして、2005年の”彩の国”です。シューマンのユモレスクとシューベルトの「さすらい人幻想曲」はパリで聴いているので、旧友に再会するような楽しみもあり、ワクワクしながら予約を入れました。
 その日、”彩の国”のホールは、ほぼ満席。”フランス人はフランス物を”という風潮の日本で、ドイツ物のプログラムを貫いたル・サージュさんは立派だと思います。フランス物ファンの私、個人的にはフランス物も聴きたかったのですが、シューマン、ベートーヴェン、そして、シューベルトの「さすらい人幻想曲」と進むうちに”ル・サージュ ワールド”に引き込まれ、大変幸せな時を過ごしました。
 アンコール1曲目は、聴き手の気持ちを考えてかドビュッシー。これも本当に美しかったですが、その後はシューマンに復帰しました。アンコール最終曲の出だしを聴いた時、思わず息を呑みました。ダヴィッド同盟舞曲集の中のワルツです。2002年、2003年に聴き、これが3回目ですが、ル・サージュさんの洗練されたワルツの運びと、それに寄り添う繊細なメロディーラインには毎回心を奪われます。「夢から醒めたくない。。。」そう思いながら、このワルツを聴きました。
 「ピアニッシモの印象は、時としてフォルテッシモの印象を上回るものなんだよ。」という彼の言葉が胸によみがえりました。表現の有るピアニッシモを出せるピアニストならではの発言ですが、こういった彼の音楽に心を惹かれるのは私だけではないと信じています。
 ソロでの再来日の日の近いことを心から祈っています。


【2005年レ・ヴァン・フランセ 公演スケジュール】
  10月19日(水) 三鷹市芸術文化センター 0422-47-9100
  10月20日(木) 姫路/パルナソスホール  0792-97-1141
  10月21日(金) 岐阜/サラマンカホール  058-277-1111
  10月22日(土) 大阪/ザ・シンフォニーホール 06-6453-1010
  10月23日(日) 豊田市コンサートホール  0565-35-8200
  10月25日(火) 松本/ザ・ハーモニーホール 0263-47-2004
  10月26日(水) 東京オペラシティコンサートホール (03)5353-9999
  10月27日(木) 平塚市民センター    0463-32-2235
  10月28日(金) 銀座/王子ホール 03-3567-9990
  10月29日(土) 茨城/ノバホール 0298-52-5881
  10月30日(日) 東京オペラシティコンサートホール (03)5353-9999